ウェルシュ菌食中毒の事例と症状

食中毒の症状

ウェルシュ菌の現状

食中毒の原因となる「ウェルシュ菌」、実際はどのような症状を引き起こすのでしょうか?また、実際にウェルシュ菌によって起こった食中毒の事例を見てみましょう。


どのように発生するか

ウェルシュ菌は食品中で増殖します。よく目にするのは、シチューやカレーなどお肉を使った料理を大量に加熱調理し、冷却保存した後に、再加熱して食べた時に起きる食中毒です。ウェルシュ菌は100℃の高温にも耐える芽胞という構造物を形成し、自己保存を行います。そのため、調理中でも芽胞の状態ならば耐えられるのです。徐々に料理が冷めていくにつれ、ウェルシュ菌は元の姿である栄養型に戻り、増殖します。冷蔵庫などで保存されると、また芽胞に戻るのですが、その際に毒素であるエンテロトキシンを産生します。そこで軽く温め直すと、再び栄養型に戻り、増殖を開始するのです。大量に増殖した栄養型のウェルシュ菌は、腸の中で再び芽胞になり、エンテロトキシンを産生します。








どんな病気

ウェルシュ菌を摂取してから、6~18時間ほどの潜伏期間を経てから、症状が出ます。症状としては、腹痛および下痢が主となります。場合によっては便に血液が混じり、粘血便となることもあります。大体の場合、1~2日で自然と症状が軽快します。嘔吐や発熱は見られません。

実際に会った事例

仕出し弁当

仕出し弁当煮込みハンバーグ

2016年4月1日、愛知県O市でT食品会社の仕出し弁当を食べた男女70人が腹痛などの食中毒症状を訴えました。幸いなことに、いずれも軽症だったそうです。O市によると、夕食用の仕出し弁当に煮込みハンバーグなどが入っていたということでした。約670人が食べ、36人から原因と思われるウェルシュ菌が検出されました。

社員食堂

2014年10月21日、新潟県N市のA株式会社N工場の社員食堂で調理された食事を食べた深夜勤務の社員が下痢などの食中毒症状を呈しました。106人のうち43人が症状を訴えており、患者13人中12人の便および牛じゃが煮込みからウェルシュ菌が検出されました。患者らは全員回復しました。

疫学

日本におけるウェルシュ菌の食中毒事件は1年あたり平均28件ほどで、それほど多くはありません。しかし、1事件あたりの平均患者数は83.7名で、他の細菌性食中毒と比べて圧倒的に多く、大規模な事態に発展することが多いのです。主に、食中毒の発生場所が大量の食事を取り扱う給食センターや仕出し弁当屋、飲食店などであることが、多くの患者を発生させてしまう原因だと考えられています。